新規事業に着手する時や新たな商品やサービスを開発する際に、参入予定の市場の状況を前もって把握し目指すべきポジションを決めておくことは非常に重要です。
市場における自社の立ち位置を明らかにする手法として「ポジショニングマップの活用」が挙げられます。
この記事では、マーケティング戦略を練っていくうえで欠かせないポジショニングマップの作り方と活用方法をわかりやすく解説します。
ポジショニングマップとは
ポジショニングマップとは、市場における自社製品のポジションを可視化し、競合他社との差別化を図るために役立つ集客のフレームワークです。
ポジショニングマップは、自社商品が市場においてどのような位置付けにあるかを把握するだけでなく、新規事業の立ち上げや新商品の開発にも大いに力を発揮します。
異なった2つの縦軸と横軸を設定した表の上に自社と他社の製品を配置すれば、市場で自社の製品がどのような位置づけにあるかが一目でわかり、ビジュアル的に競合他社との比較、差別化ができるようになります。

ポジショニングマップを作る目的
それでは具体的にポジショニングマップを作成する目的を説明します。
ポジショニングマップを作る目的は以下の3点です。
- 自社製品の優位性を把握する
- 現状を把握することにより課題の発見や改善につなげることができる
- ブルーオーシャンを見つける
順に説明します。
自社製品の優位性を把握する

ポジショニングマップを使い他社の商品を分析することにより、自社にしかない魅力いわゆるストロングポイントが明確になります。
また、多面的に商品や市場またお客様のニーズ等の分析によって、これまで何でもなかったと思われていた部分が、自社にしかないオリジナリティをもった長所として発見できる可能性があります。
現状を把握することにより課題の発見や改善につなげることができる
自社の強みや立ち位置の把握により、ユーザーに対して他社との差別化をアピールきる一方、逆に自社のウィークポイントも明確にできるため、今後の課題発見や改善につながります。
ブルーオーシャンを見つける
ブルーオーシャンとは、他社との競合が少なく大きな利益を獲得できる可能性がある市場の領域のことです。
のポジショニングマップを活用により、自社の魅力や優位性を見つけ出せるだけでなく、競合他社がカバーできていないブルーオーシャンの市場領域を把握できるというメリットもあります。

ポジショニングマップの作り方
まずは情報の洗い出しと整理から始めます。
自社と競合他社製品との客観的な分析が大切です。
競合他社と自社製品を整理する
ポジショニングマップを作成する前の事前準備として、自社と競合他社の製品を以下のように整理します。
- どのような製品がありどのような特徴があるのか
- 価格帯はどうか
- ターゲット層は若者向けなのか年配者向けなのか、男性向けか女性向けか
- それぞれの製品の具体的な強みや弱みはどうか
このような情報をまとめてリスト化しておくと、ポジショニングマップの作成がスムーズになります。
競合他社と自社の購買決定要因(KBF)を比較する
KBFとはKey Buying Factorの略で、ターゲットとなるユーザーが商品を購入する際に決め手となるような重要な要素のことです。
「価格」「ブランド」「機能性」「ファッション性」「利便性」等が挙げられます。
ビジネスで使用するノートパソコンを例に挙げれば、持ち運びやすさや動作の軽さ、処理能力、バッテリーの持続時間等がKBSとなります。
主観で KBF を分析するのではなく、アンケートや口コミ などの市場調査などを活用し、お客様の意見を集めておくと 正確な分析が可能になります 。
KBF がわからない場合は、 既存顧客や見込み顧客に「選んだポイントは何ですか」「 購入する際はどういったことを重視しますか 」など質問してみることも必要です。 KBFを抽出する調査方法としてインタビューやアンケートは非常に有効です。
競合他社と自社製品の購買決定要因(KBF)をそれぞれ洗い出して比較します。
○○〇のKBF | 自社 | A社 | B社 | C社 | D社 |
価格 | 〇 | △ | ◎ | ◎ | 〇 |
機能性 | ◎ | 〇 | △ | △ | 〇 |
処理速度 | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 | ◎ |
デザインのよさ | 〇 | ◎ | 〇 | △ | △ |
ポジショニングマップの軸となる要素を2つ決める
洗い出したKBFの中からマップの縦軸と横軸となる要素を選び出します。
ここで、ポジショニングマップの縦横の軸となる2つの要素を決める際に注意するポイントを2つ紹介します。
- 重要度の高いKBFを軸にする
- 縦軸と横軸の相関性が低いものを選ぶ
順に説明します。
重要度の高いKBFを軸にする
ポジショニングマップを作るうえで、KBFの中からどの要素を選ぶかは非常に重要です。重要度の低いKBFを軸にすると「優位性を把握する」「差別化を図る」という意義が薄れてしまうからです。
ユーザーが商品を購入する際の要素という意味ではどのKBFも重要ですが、あえて優先順位の高い要素からの抽出がポイントです。
また自社の製品の優位性を確認したい場合には、自社製品が他社に比べて優位にあるものを軸に選びます。
逆に客観的に自社の製品を評価したい場合には、KBFのうち最もユーザーの行動に影響すると考えられる要素を抽出するようにします。
使用するポジショニングマップの目的によっても、縦横の軸の要素が変わります。
縦軸と横軸の相関性を低くする
注意するポイントの2つ目は、縦軸と横軸の相関性を低くするという点です。
なぜなら、軸同士の関連性が強い場合「どちらかが高いともう一歩も必然的に高くなってしまう」という場合あるからです。
例えば、価格と品質を縦横の軸にすると価格が高くて品質が良い製品と、価格が安く品質も低い製品に二極化してしまいがちになります。
このような軸でマップを作成しても、右肩上がりの直線に沿ってポジショニングされるだけで、製品の優位性の把握や他社との差別化、課題や改善につなげられません。
ポジショニングマップの縦横の軸はそれぞれ独立したKBFを選びましょう。
マトリクスに自社・競合他社の商品・サービスをマッピングする
縦横の軸を設定したら、マトリクスに自社と競合他社の製品をマッピングします。 完成したポジショニングマップは、今後の施策や商品開発に落とし込み活用していきます。

ポジショニングマップの作成に使えるツール
EXCEL(エクセル)
Powerpoint(パワーポイント)
Word(ワード)
Numbers(ナンバーズ)ーiPad,iPhone ,MAC用アプリ
Keynote(キーノート)ーiPad,iPhone ,MAC用アプリ
Pages(ページズ) ーiPad,iPhone ,MAC用アプリ
ポジショニングマップの作成例
1.罫線もしくは図形線を縦軸と横軸用に引き十字にする
2. 横軸と縦軸の軸要素を書き入れる
3. ポジションを決める
4.ポジション部分に円や楕円などの図形を配置する
5.円や楕円に商品名などを書き入れる
必ずしもこういったツールを使わずに手書きで紙に作成しても問題はありません。
だれでも簡単に作成が可能です。
ポジショニングマップをどう活用するか
作成したポジショニングマップを使い、何を見てどう活用していくかが大切になります。
自社製品の魅力を分析する
ポジショニングマップを作成すれば、ユーザーに向けてアピールするべき自社の魅力を改めて把握できます。
また、自社の販売戦略がユーザーが考えているニーズとずれていないかを確認し、今後の戦略がを立ててやすいです。
自社の特徴を把握する
価格やデザイン、トレンドなどさまざまな軸を用いたマップを複数作ることにより、自社製品の有利なポイントまたは不利なポイントを確認します。
自社の製品が持つストロングポイントとウィークポイントを明確にし、今後の製品開発・サービスの向上につなげましょう。
新たにターゲットを決め戦略を練る
新規事業を始める場合や新製品の開発の際は、 ポジショニングマップによってまだ他社がカバーしていない空白領域 ブルーオーシャンの発見が可能です。
また、自社が狙っているポジションにすでに他社が進出している場合でも、その内容の詳しい分析によって、競合に打ち勝つための戦略を立てられます。
まとめ

ポジショニングマップとは、競合他社と比べて自社にどのような優位性があるかや、どのような差別化を図るかを考えるのに役立つ分析手法のひとつです。
ポジショニングマップの作成にあたっては、まずターゲットのKBFの洗い出しと各KBFの重要度の設定から始めてください。そこから競合他社とKBFを比較し、自社の優位性を明らかにしましょう。
次に、優位性があるKBFを軸にマトリクスを作成し、マトリクス上に自社と競合他社を配置すればポジショニングマップの作成は完了です。
ポジショニングマップからは、自社の商品・サービスの優位性がどこにあるのかや、どの競合他社とどう差別化を図るべきかが見えてきます。
ポジショニング マップを作れば 市場の中での自社の立ち位置、そして目指すべき領域が明確になります。
マーケティング戦略を成功に導くために ポジショニング マップを大いに活用しましょう。
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